子どもにスポーツや音楽などを体験させたいと考えたとき、新しい環境になじめるかどうか心配になる保護者の方もいるかもしれません。
せっかく教室に足を運んでも、子どもが親から離れずに泣いてしまったり、ほかの子どもたちと一緒に活動できなかったりすると、親としても戸惑いを感じるものです。
本記事では、子どもが習い事で輪に入れない理由や、その背景にある心理的な要因について解説します。また、子どもが安心感を持って活動に参加できるようになるための具体的な接し方や、個別のペースに合わせられるマンツーマン指導の事例について紹介します。
子どもが新しい環境で不安を感じる理由

子どもが新しい環境で不安を抱くことには、いくつかの理由が考えられます。健やかな成長に向けて体を動かす機会を作りたいと願う反面、幼児期は人見知りが強く出る時期でもあり、集団での活動が難しいケースも少なくありません。
親と離れて過ごす経験が少ないことによる不安
まず考えられる理由として、これまで親と離れる経験が少なかったことが挙げられます。実家が遠方にあるなどの事情で、頻繁に祖父母や他人に預ける機会があまりなかった場合、急に集団の中に入ることは子どもにとって大きなハードルとなる可能性があります。
また、子どもによって個人差があり、すぐに打ち解ける子もいれば、段階を踏んで少しずつ慣れていく必要がある子もいます。
はじめての環境に対する緊張も理由の一つに挙げられます。大人でも新しい場所では緊張を覚えるものですが、幼児期の子どもであればなおさらです。時間の経過とともに指導者や友達に慣れていく傾向がみられるものの、そのペースは子ども一人ひとりで異なります。
親の緊張が子どもに伝わる影響
親自身の緊張が子どもに伝わっている可能性もあります。集団の場では、自分の子どもと周囲の子どもを比較してしまい、「今日も友達の中に入れないのではないか」と焦りを感じることもあるかもしれません。
親の不安や緊張を子どもが敏感に察知し、さらに不安を増幅させているという悪循環に陥ることも考えられます。
繊細な子どもが環境の変化で受けやすい刺激
小学生になっても「お母さんにそばにいてほしい」と感じるお子さんはいます。単なる甘えとは限らず、不安の感じやすさや気質が関係している場合があり、研究では不安傾向のある人において、脳の扁桃体が脅威や不安を伴う刺激に反応しやすい傾向が報告されています。
幼児期の親との分離不安は発達過程で広くみられます。一方で、小学生になっても親と離れることに強い不安を感じ、そのために学校生活や日常生活へ影響が及んでいる場合には、分離不安症が疑われることがあります。
また、不安が続くことで、保護者の付き添いを求めたり、登校に対する不安が強まったりするケースもみられます。ただし、症状の現れ方や経過には個人差があり、必ずしも同じ経過をたどるわけではありません。
保護者の対応で逆効果になりやすいケース

繊細な子どもは、励ましの言葉を受けたとき、「自分が怖いと感じている気持ちをわかってもらえなかった」と受け取ってしまうことがあります。その結果、扁桃体がさらに強く反応し、「お母さんがいないともっと不安になる」という感情が増し、余計に親から離れられなくなる傾向がみられます。
周りと同じように行動させようと焦る気持ちが、子どもにとってはプレッシャーとなり、活動の時間が親子双方にとって苦痛な時間になってしまうことも考えられます。
子どもが安心して参加できるための関わり方

子どもが安心感を得て、少しずつ新しい環境に慣れていくためには、保護者の関わり方が大きな鍵となります。ここからは、具体的な対応方法を3つ紹介します。
安心を与える「3S対応」を意識する
安心感を与える「3S対応」を意識することです。3Sとは、笑顔で(Smile)、ゆっくりと(Slow)、優しい声で(Sweet)接することを指します。この3つの要素を取り入れたコミュニケーションを行うことで、敏感に反応している子どもの扁桃体が少しずつ落ち着いていく可能性があります。
日常の会話からこれらの対応を取り入れ、子どもに安心感を増やすアプローチが有効です。
子どもの気持ちを待つ姿勢
子どもの気持ちを「待つ」ことも大切です。大人はつい「早くしなさい」「もう一人でできるでしょ」と急かしてしまいがちですが、繊細な子どもは心の安心が整わないと次の行動に移ることが難しいとされています。
子どもが自分から動き出したり、話し始めたりするまで、ゆっくりと待つ時間を設けることが求められます。
そして、子どもが行動を起こしたときには、その気持ちをしっかりと受け止めて肯定し、「自分でできた」という感覚につなげていくと良いでしょう。
小さな成功体験を積み重ねる工夫
目標を低く設定したスモールステップでの挑戦です。安心の土台が形成されてきたら、少しずつ目標を設定します。いきなり「今日から一人で参加してみよう」と促すのはストレスが大きすぎるため、子どものペースに合わせて段階を踏むことが大切です。
最初は「5分だけ一人で教室の中にいる」、次回は「10分間に延ばす」、そして慣れてきたら「お母さんは教室の前で読書をしながら待っている」など、小さな目標を一つずつクリアしていく方法です。この進行のスピードも、子ども自身のペースに合わせることが大切です。
また、親がそばにいることで子どもが楽しめているのであれば、付き添いを続けるという対応でも問題ないとされています。楽しめている状態こそが、脳を成長させる時間となるため、保護者の捉え方を少し変えるだけで、その時間が有意義なものになる可能性があります。
まとめ

子どもが新しい環境に対して人見知りを見せたり、不安を感じたりすることは、成長の過程において起こり得る通過点です。集団での活動にまだ慣れていない時期は、子どもの様子をしっかりと観察し、個別指導から検討していくという選択肢もあります。
そのため、親自身が張りつめず、気持ちを楽にして子どもと向き合うことが大切です。安心感の土台がしっかりと育つことで、子どもは自然と一人で挑戦できるようになる日が来ると考えられます。
家に帰ってからも子どもからの興奮した報告が止まらないような、楽しい活動の時間を過ごせるような環境づくりを心がけましょう。

